
こんにちはKENCHANです。
今回紹介する本は、社会派ブロガー & 紀行文筆家の「ちきりん」さんが書いた『自分のアタマで考えよう』です。
ちきりんさんは証券会社で働き、米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。
マネージャー職を務めたのちに早期リタイヤし、現在は働かない生活を謳歌中。50か国以上を旅しているそうです。
また、2005年から「Chikirinの日記」というブログを執筆されており、月間100万PV以上をたたきだすオバケブロガーです。
そんなちきりんさんの考え方をぜひ学びたいと思い今回の本を読みました。
「考える」といえば、以前紹介した本『ゼロ秒思考』です。
ゼロ秒思考は深く考えることについての本でした。
『自分のアタマで考えよう』はそれよりも根源的な問題、「考える」ということは一体何なのか?について気付かされる本です。
何を考えたら良いのか?どう考えたら良いのか?と悩んでいるあなたにおすすめの一冊。
考えるための手法を学べて、すぐ役に立つこと間違いなしです。
『自分のアタマで考えよう』の要約
各章に1つずつ、ちきりんさんの思考方法が記されています。
それらを要約して紹介したいと思います。
自分なりの解釈もありますので、ちきりんさんの考えとは異なる場合もあると思いますが、すいません。
「知っている」と「考える」はまったく別モノ
自分の頭で考えることは知識と思考をはっきり区別することからはじまる。
知識とは他人が考えたことであり、思考とは自分で考えたこと。
人は他人が考えたことを、あたかも自分で考えたことかのように錯覚してしまう場合が割りとあるので注意する。
物事の良い面も悪い面も両方考えることが純粋に「自分の頭で考える」ということ。
ある情報に触れたとき、楽観的なことしか読み取れない、あるいは悲観的なことしか読み取れないのは、もともと知っていること(=知識)に影響されているから。
思考力のある人は常にゼロから考えられる。それができる人が未知の世界に向けて新たな思考を拓いていくことが可能。
得た情報をもとに、新たに自分で考え、今までになかった結論にだとり着くために過去の知識を一旦横に置いておくことが重要。
最初に考えるべき「決めるプロセス」
何かを決める時に一番始めにやることは「どうやって結論を出すべきなのか」を考えることである。
それを考えることで、どんな情報がどうであれば、自分の決めたいことが決まるのかを定めておく。(このことを本の中では「意思決定のプロセス」と述べられている。)
意思決定プロセスがあれば、意思決定に必要な情報だけを集めれば良くなり、無駄な情報を集めなくてすむので情報収集に費やす時間を大幅に短縮できる。
逆に意思決定プロセスが存在しなければ、いくら情報を集めても何も決まらない。
人は情報を集めることに熱中し、意思決定プロセスを考えるのを放棄しがちなので注意する。
考える力をつけるのに有効な勉強法は、考える時間を増やすことである。
考える時間を増やすには、自分は今日1日でいったい何時間を考えることに使っただろう?と日々意識することが大切。
1日30分だと分かれば、1日1時間へ、1日1時間と分かれば2時間へと、考えることに費やす時間を増やしていく。
集中力には限界があるので、考えているときは、ブラウザも表計算ソフトも閉じ、考えることに集中する工夫が必要。
「考えること・思考」とはインプット情報をアウトプットすること。
つまり、ある情報をもとに、私はこう結論付けた・こんな考えに至ったということ。
結論が出ないと「考えた」とは言えない。
考える力をつけるには、仮でも良いので、その時点での結論を出すことが重要である。
「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと
情報、特に数字の情報を見た時に、まず「なぜ?」「だからなんなの?」と考えるのが重要。
「なぜ?」は数字の背景を探る問いである。
どうしてその数字になったのか、何が起きてその数字になったのか、すべてに理由がある。
(例として、なぜ売り上げが伸びているか?なぜこの地域の人口が減ったのか?など。)
「だからなんなの?」は未来を予測することである。
過去の数字がこうなら、次はどうなるのか?それにたいして自分はどうするべきなのか?を考える。
(本書では、日本の人口動態のグラフが載っており、少子化問題の「なぜ?」「だからなんなの?」に対するちきりんさんの考えが紹介されています。)
考える力をつけるなら、ある情報を仕入れたとき、それに対して考えに考え抜くことが重要。
情報を集めるのにかかった時間や、数字からグラフを作成するのにかかった時間と同じ長さの時間を使って考える。
ある数字に対する「なぜ?」「だからなんなの?」は調べればわかることが多々ある。
しかし、そんなことでも「考える」ことには意味がある。
それは、過去のデータがあっても、将来予測されていない分野があるからである。
そんな分野において、自分で考える力があれば、将来に備えることができる。
調べればわかることでも、あえて自分の頭で考えることで将来に役立つ「考える力」が身につく。
これは!と思った情報だけに対してだけでも「なぜ?」「だからなんなの?」と考えるクセをつけることが重要。
あらゆる可能性を検討しよう
人は何かを考える時に無意識に選択肢を排除してしまうことがある。
そうならないために分解図を使って考える方法が有効。
分解図を使うと、すべての可能性を忘れず、網羅的に洗い出すことが可能になる。
本書では例として生活保護費増大の対策について論じられている。
生活保護費を減らすために何ができるか、まずは下の図のように分解図の1段目を作成する。
参考:『自分のアタマで考えよう』 P73
さらに、下のように2段目以降も分解することで、あらゆる可能性がもれないように考えを進める。
参考:P77
そうして要素をすべて書き出したら、それぞれの要素に対する対応策を考えていく。
応用として概念を要素分解して、あらゆる組み合わせを検討する方法がある。
ある概念に関して、ひとつずつの要素を出していき、「すべての要素が出尽くしているか?その要素だけで完璧か?」と考えていく。
本書では、例として歴史に名前が残るほど大きく世の中を変えるリーダーの条件とは何か?
という概念について要素分解し、それらの組み合わせを検討している。
まずは、これらの条件がそろえばリーダーだと言える!まで、すべての要素を出していく。
要素を出し終えたら、それらの組み合わせを全通り考える。
下のように表を書いていくと分かりやすい。
参考:P86
縦と横に比べてみよう
考えるためにもっとも役立つ分析手法とは比較することである。
比較には、比較の対象と比較の項目が必要。
比較の対象とは、なにとなにを比べるのかということ。比較の項目とはどんな点について比べるのかということ。
比較は「縦と横に見る視点」が重要である。
縦=時系列、歴史的な視点でものごとを見ること。
横=他社比較、国際的な視点でものごとを見ること。
本書では例として、戦後の世界経済についての縦横比較の図が下のように記されています。
縦が10年ごとの年代、横がそれぞれの国を表している。
参考:P104
こうして、比較表を作成することで戦後60年で世界に起きたことが一目で理解できるし、今後の日本がどうしていけばよいかも分かってくる。
プロセスを比較することもできる。
例えば、企業買収のプロセスは下のように示すことができる。
参考:P111
こうしてプロセスを比較することで、上手くいかない理由がどのプロセスにあるのかがよくわかる。
プロセスに分解して比較することで、ものごとの進め方や段取りを直接比較することができる。
判断基準はシンプルが一番
ものごとがなかなか決められないのは、選択肢が多すぎるのではなく、判断基準が多すぎるからである。
いくら選択肢が多くても、ひとつでも明確な判断基準があれば人はすぐに決断できる。
判断基準がいくつかあっても現時点での優先順位をつけると決断が一気に楽になる。
本書では婚活女子が例に挙げられている。
婚活女子は絞り込んだふたつの判断基準によって判断できるように準備している。
例えばある婚活女子は経済力と相性のふたつの基準を持っているとする。
参考:P120
この表を活用し、男性を4つのボックスに振り分けることにより、それぞれの人にどう対応すべきか、即座に決断できている。
目標の姿が定まっていないから判断基準が決まらない。
逆に目標の姿が決まれば、それを達成するためにどんな判断基準を使えば良いか明らかになる。
あれも良いな、これも良いなと迷っていたら何も決まらないし、動かない。
シンプルな判断基準を持っているものだけが結果を得ることができる。
優先度の高い基準に基づいて選択肢や事象を見ると、細部が省略され、本質的なポイントが浮かび上がる。
レベルをそろえて考えよう

ものごとを考えるときに、異なるレベルをごちゃ混ぜにすると、考える前から間違えてしまう。
数字を比較する場合に加え、議論する場合にもレベルをそろえることはとても重要である。なぜなら、相手が意図的にレベルをずらした議論をしてくる場合があり、どのレベルで話をしているのか確認しないと、論点をはぐらかされてしまうことがあるから。
なんだかレベルがそろっていないなと感じたら、分かりやすいように同じレベルで整理してみると良い。
そうするとレベルがそろっていない本当の理由が浮かび上がる。
例えば、アフリカの人口9億人以上なので大きなビジネスチャンスだとよく言われる。
アフリカにはいろんな国があるのにどうしてひとまとめにするのだろう?
これには裏がある。アフリカの人口を個々の国で言えないのは、アフリカでチャンスが大きいと言いにくくなるからである。
情報でなく「フィルター」が大事
いくら情報があっても、それらをふるいにかけるフィルターを持たないと、インプットがパンクするか、自分の中に何も残らない。
情報のフィルターとは自分独自の選択基準であり、それが何かを考えることが本当に自分の頭で考える価値のあることである。
例として就活生の問題が挙げられている。
就活生は、しばしば企業に関する情報集めに必死になっていて、意味のあるフィルターを持っていない。
企業の情報をふるいにかける意味のあるフィルターがないと、就職したあとで自分のやりたかったことじゃなかった、失敗したとなるのだ。
独自のフィルターで仕事を分けることができるようになれば、自分に合っている職業、自分のやりたい職業を探しやすくなる。
独自のフィルターを持つことは市場世界でも重要だと言える。
自分(自社)独自のフィルターを消費者に新たに提示することで、自分の商品を選んでもらうこともできるからである。
ビジネスの世界では、新たな選択基準=新たなフィルターを提示することを、「ゲームのルールを変える」という。
与えられたフィルターに何の疑問も持たず、そのまま受け入れて必死に頑張っても、果てなき消耗戦になるだけ。
重要なのは「自分(自社)独自のユニークなフィルターを見いだし、それで勝負していこう!」という発想に転換することである。
そうして、ゲームのルールを変える工夫をすると、自分たちの努力が正当に報われる世界に持ち込める。
データはトコトン追い詰めよう
一見正しそうなデータほど意識して疑わなければならない。
「もっともらしいデータ」ほど、すっと納得して、疑うことを忘れさせてしまうからである。
何の疑問も持たずに納得してしまうと本質的なことが全く見えなくなる。
たとえ権威ある報道機関からの情報でも一度は疑ってかかり、実際にそのデータを追い求めて深堀してみると自分で考える訓練にもなる。
まずは自分で考え、あとで「知識として、他の人や専門家が考えたことを調べる」という方法をとると、「誰かが考えたこと」と「自分の思考」が意識的に対比できる。
そうして、自分と他人の思考の結果と、それに至る思考の道筋を共有することに意義がある。
そのプロセスを通して、自分とは異なる思考方法を学び、ひとりひとりが考える力を伸ばすことが可能になる。
グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する
効率よく考えるためには、情報に応じてグラフを使い分けることが必要である。
円グラフはシンプルで分かりやすく、ひとつの数字の内訳を表すには最適。
ふたつ以上の数字の内訳を比較するときは、棒グラフを使用すると分かりやすい。
同じ数字でもどんなグラフを使うかで、それを見て考える時の「思考の生産性」が大きく変わってくる。

階段グラフは、棒グラフの各要素を横にずらして表示するグラフ。
階段グラフのメリットは、意味を持った内訳を視覚化できることである。
階段グラフは数字の表のままの家計簿や、単純な円グラフ、棒グラフよりも思考を助けてくれる。
階段グラフにはマイナスを視覚化できるという特徴もある。
階段グラフは高い表現力を持つ分析的なグラフであり、一定時間内に考えられることの量が大幅に増やせる。
参考:P208
自分の考えを深めるために、まずは思考を言語化し、次に視覚化するという方法が有効。
この視覚化するという過程が重要。
自分の考えを視覚化するには、言語化するよりも突き詰めて考えてくる必要があるからである。
視覚化するためには、自分の考えを図や絵にしてみることが有効。
言語で考えていた時には気がつかなかった細かい部分もはっきりしてくる。
思考の資格ができれば、頭の中に「何となく浮かんでいたアイデア」も一気に具現化する。
参考:P214
知識は「思考の棚」に整理しよう
知識と思考の最適な関係は、「知識を思考の棚に整理する」というものである。
本書では例として、9.11事件の各国の報道内容についての「思考の棚」が紹介されている。
参考:P225
思考の棚とは、上記のようにある一定の決まりにそって、情報を埋めていく表のように考えると良い。
自分が手に入れた知識を、それをもとに考えたこと(=思考)の中に整理して格納していくことで、個別の知識が意味をもってつながり、全体として異なる意味が見えてくることがある。
そういった「統合された知識から出てくる新たな意味」が、「洞察」と呼ばれるものとなる。
思考の棚をもっていると、上の図の「?」の部分を埋めようと意識するため、情報に敏感になることができ、必要な情報を見過ごしてしまうのを防ぐことができる。
何気ないものをみて瞬時に何かを考え付く人とそうでない人との違いは、知識の多さではなく、思考の棚の多さである。
大量の思考の棚をもつことで、普通の人ができないような発見をしたり、アイデアを思いついたりすることが可能になる。
情報が手に入る前から、想定に基づいて思考しておくことも重要。
あらかじめ必要な情報が手に入ったときに、どんなことが分かるのかを想定していれば、すぐに気の利いた意見が言えるし、頭の回転が速い人だと思われる。
情報の価値を判定するためにも、事前にその情報から分かることや言えることを明確にしておくことが大切。
情報の価値がはっきりすれば、妥当な情報入手コストも明確になる。
情報収集に無駄な時間を費やさず、本当の意味での考える時間に回す余裕も出てくる。
参考:P233
新たに情報が手に入った時は、そのまま保存するのではなく、どんな思考の棚に納めるのが正しいのか判断する。これが真に考えると言うことである。
感想
ちきりんさんの思考方法は、下の2つに分類することができると思いました。
- 情報収集の前にやること
- 情報収集のあとにやること
情報収集前にやること
- 意思決定のプロセスを決める
- 判断基準の取捨選択をする
- 自分独自のフィルターを見つける
- 思考の棚を作っておく
情報収集のあとにやること
- いったん知識と思考を分離する
- なぜ?だからなんなの?と問う
- あらゆる可能性を探る
- 縦と横に並べて比較する
- レベルをごっちゃにしない
- データはトコトン追いかける
- 視覚化で思考を深化させる
- 思考の棚に整理する
情報収集前にやることは多い
普通考えると言ったら、情報を集めたあとのことだと思いますよね。
僕もそう思ってたのですが、この本を読んで、情報収集する前に考えておかなければならないことも意外と多いなと感じました。
情報収集前にやるべきことしないと、むやみやたらに情報を集めるだけになり、無駄な時間を消費します。
それに、必要な情報もスルーしてしまう危険性もあります。
情報を集める前に
- 何が分かれば、どんなことが決まるのかを考える
- 目標を明確にして、シンプルな判断基準をもっておく
- 考える価値のあることを選択できるフィルターを見つけておく
- 今まで得た知識を整理して、次に得た情報を納める「思考の棚」をつくっておく
上記のことから始めてみたいと思います。
『自分のアタマで考えよう』では僕が要約した内容の他にも、ちきりんさんがあるデータに基づいて実際に考えたことや、その手順なども紹介されています。気になった人はぜひ読んでみてください。
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